2009.06.20 時の雫
木崎さと子の「時の雫」という小説の主人公が、
「傘屋さん」になりたがっていたということを
雨の季節になると思い出すのです。
そして、その傘屋さんというのはこんなだろうか
といつも思い浮かべるのが
荻窪の商店街の、傘の専門店。
洋傘、と看板にあるように、どこか洋風レトロなお店。
高校生のころは、毎日その店の前を通って、
店の中を飛んでいるように見える傘をふしぎな気持ちでのぞきこんでいました。
カナダの人だったか、屋内の中で傘を開くのは不吉だと、という話をするので
じゃあ、選ぶ時どうするのと聞いたら、
ともかくお店の中で傘を開いたりはしない、と言っていました。
彼らからすると、傘が開いている傘売場は怖いらしいです。
傘は開いている時がきれいなのに。
和傘の風情には惚れぼれしますが、洋傘の透明感と明るさもきれい。
もっとも今どき、洋傘なんて言わないですけどね。
柄もそうだけれど、実は雄々しくきっぱり開くジャンプ傘も好き。
夜は雨粒が光ってきれいな、透明なビニール傘も悪くない。
大好きな傘ほどなくしやすいというのも、切なく。
どこにいってしまったの、と思う数々の傘。
ふと気になって、この間荻窪の商店街を歩いて
きょろきょろしてみたのですが、
あの傘の専門店はなくなっていました。

時の雫
(中央公論社 1991/07)
木崎 さと子
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