空飛ぶ色いろnatsuno07

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2018.04.03  細雪 


sasameyuki201803.jpg
細雪
(新潮文庫)
谷崎 潤一郎

ぶ厚い文庫本3冊を積み上げたときは
うーむと思いましたが、
あっという間に読み終えてしまいました。
小説の中の時代は書かれている史実などから、
昭和11年から16年頃だそうです。

林芙美子とほぼ同世代ぐらいの姉妹は
上流社会の女性たちですが、
退廃的であったり、刹那的であったり、
ともすると共通しているように思えたりします。
赤痢、死産、壊疽、黄疸、流産などの
苦難にさらされるのは生身の人間として同じ。
建て前の中に、何とか無難におさまっている
本家や分家の姉たちも、
いまだ嫁ぎ先が決まらない三女四女も
実際は細かい雪にさらされるような
冷たい現実の中にいるのに、あたかも
花吹雪の中にいるように見えています。

作家はカメラマンのように
姉妹たちの日常を写し出します。
まるでシャッターを押し続けて
連写しているようです。
でもどのショットにも無駄がない。

ひとりひとりに印象的な場面がありますが、
上巻で長女の鶴子が大阪を離れるときに
「東京へ行くくらいで泣くなんて」と
妹たちに笑われている場面がありました。
末っ子の妙子とは違った意味で、
「悪役」を引き受けている存在。
からっ風の吹く殺伐とした東京で暮らし、
本家と疎まれ、安普請の家だと蔑まれる。
そんな鶴子が泣く場面が下巻にまた出てきます。
「きっと一緒に芝居が見たかったのだ」と
妹の幸子は後で思うのですが、
そんなふうに泣いてしまう鶴子の
不器用さ、心細さが心に残りました。

描写の鮮やかさ、人間観察の鋭さ。
谷崎潤一郎の作品を読むのは初めてでしたが、
ただただ感じ入って読んでいました。

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