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空飛ぶ色いろnatsuno07

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2020.01.29  冬の水練 


2020_suiren.jpg
冬の水練
(岩波書店 2002/7/4)
南木 佳士

母の本棚に、南木 佳士の本が数冊ありました。
菊地信義の装丁が素敵なので
読んでみることにしました。
「水練」とあるので、また戦時中の話かと思いきや
著者は1951年生まれ
終末期医療に従事される医師であり、
芥川賞受賞作家でもあります。
著者自身がかかった「うつ病」からの
回復期にかかれたエッセイ集です。

「冬の水練」は
最後のエッセイのタイトルから来ているものですが、
「水練」についてはほとんど書かれていません。
だいたいが、ふんわりとしたり
ちくちくしたりする日常のお話でした。

話はそれますが、
ドラマの「いだてん」に出てきた神田YMCAのプール、
で泳いだことがあります。
いくら何でも1917年に作られたという温水プールが
そのままだったわけはないと思いますが、
そうとう古めかしい感じだったなぁというおぼろげな記憶が
うわぁっとよみがえりました。
東陽町に新しいプールができてからは
そちらで泳いでいたので、すっかり忘れていました。
あんなに泳ぐのが好きだったのに、
今は、水にぬれるの大嫌いです。

母もかつてはスイマーだったらしいです。
これは祖母から聞いた話で、
「いだてん」にも出てきた古式泳法「のし」が得意で
めちゃくちゃ早かったのだとか。
祖母の自慢話でしたが、母は
まるで別人の話を聞くような顔をして聞いていたなと
なんだか懐かしく思い出しました。


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2020.01.24  昭和史1926-1945 


showa-shi1925-1945.jpg
昭和史1926-1945
(平凡社ライブラリー 2009/6/11)
半藤 一利

昭和のシの字も知らない世代のために
開かれた「昭和史講座」の書き起こし、だそうです。
とても読みやすくて一気に読んでしまいました。
城山三郎の「落日燃ゆ」でイメージの良い広田弘毅が
けっこうそうでもない人であったり
歴史上の人物も
語る人によっていろいろな面があるものだと思いました。
込み入った事柄が明晰に解説されています。

昨年の秋の「トロールの森」のイベントで
紙芝居屋さんがやってきて、「黄金バッド」を見せてくれました。
なんだかそんな雰囲気の語り口でもあります。
口をあけて見入っている子供のような気持ちで
夢中で読んでしまいました。
でも、たとえば、二・二六事件の話の中で

奥さん方が危急の時にじつによく頑張った
という話が、この殺伐たる二・二六事件に
ちょっとした明るさをもらたしてくれるのではないでしょうか


そんな話にはふと我にかえるように
「そうなのか?」と思ったりします。
以前、広津桃子の追悼記事のことを書きましたが、
「個人」ではなくて「みんな」を作り出して
ある「結論」や「イメージ」を導きだしている。
おそらくは「そのとき必死の抵抗を見せた女性たちがいた」
という意味なのでしょうが、
目の前で夫を殺されるという状況に立たされた女性がいたことを
明るいというのは微妙だなと思いました。

著者はわたしからすればずっと大人の人ですが、
当時は少年でした。その少年が、
「東京大空襲」のあとに手伝いにいったときの話が
いちばん印象的でした。
サン=テグジュペリの云う
「虐殺されたモーツアルト」だと思うのでした。

関連記事 in my blog: 孫に語り伝える『満州』, 精神の在り場所 
戦う操縦士 古い文庫本のこと


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2020.01.21  光のただなかに立って眺めている 


umi20200211.jpg

昨年、八木義徳の小説を読んで以来
戦時中にタイムトリップしている今日この頃です。
二・二六事件について書かれた本の
「雪はよごれていた」というタイトルを見たとき
中原中也の詩
「汚れちまった悲しみに」が思い浮かびました。
調べてみると
中原中也が亡くなったのは、
二・二六事件のあった1936年の秋でした。

おまへはもう静かな部屋に帰るがよい
煥発する都会の夜々の燈火を後に
おまへはもう、郊外の道を辿るがよい
そして心の呟きを、ゆっくりと聴くがよい

これは、最期の詩だそうです。
故郷の山口に帰ると決めた矢先の死でした。
煥発する都会の夜々の燈火は
その後、戦争に向かって灯火管制をひかれ
暗くなっていくはずです。

ほんにおまへもあの時は
此の世の光のたゞ中に
立って眺めてゐたっけか


詩人自身が亡くなった翌年1938年に出版された
「在りし日の歌」の中に収録されている詩
「また来ん春」には
動物園に来ている父子の姿があります。
此の世の光のたゞ中で
鹿に見とれている幼児とその父親。

もし生きていれば中也もこの子も
八木義徳の子供のように戦争に巻き込まれ
空襲の中を逃げ回らなければいけなかったかもしれません。
歴史になってしまった過去に
「もし」は存在しないけれど
未来は、良くも悪くも「もし」の中にしか存在しないのだな
なんだかそんなことを思うのでした。

Nakaharachuya1.jpg
(彌生書房から「世界の詩」シリーズとして昭和39年出版された詩集。
編者は大岡昇平。
表紙絵は、南桂子の夫、浜口陽三の作品)


関連記事 in my blog: 頑是ない歌, 南桂子のハシビロコウ


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2020.01.18  雪はよごれていた 


2020_yukiwayogore.jpg
雪はよごれていたー昭和史の謎 二・二六事件最後の秘録
(日本放送出版協会 1988/2/20)
澤地 久枝

大河ドラマの「いだてん」は、
オリンピックの話ではあったけれど、
昭和を生きた人々の様々な思いが
駆けていく、そんなドラマでした。
二・二六事件で殺害された高橋是清も
ほんのちょっと出てきただけですが、
ショーケン最期の役者姿ということもあって
目に焼き付くものがありました。

それで、読んでみることにしたこの本。
主人公は事件の裁判にかかわった検察官、
匂坂春平です。
匂坂家には当時の調書など膨大な資料が保管されていましたが、
終戦直後も、亡くなったあとも公表されることはなく、
50年以上の歳月を経た昭和末期に、
ようやく公開されたそうです。

1958年夏、庭仕事をしていた匂坂春平が倒れた場面から
急激に1936年の二・二六事件当時までさかのぼる、
そんな荒っぽい急発進でノンフィクションは始まります。
基本事項はばっさり省略されているため
事件について良く知らないで読むわたしには、
かなりわかりにくい展開のため、
人名や、用語をネットを調べながらの読書でした。

この本が出版されたのは、昭和最後の2月。
二・二六事件当時の出版当時も
随分世の中は変わっていたのでしょうが、
バブル真っただ中の32年前と今現在の日本も
かなり状況が違っています。
そういえば、宮部みゆきの「蒲生亭事件」は、
二・二六事件当時にタイムトリップする話でした。
再読してみようと思っています。

kodanjutaku.jpg
(江戸東京博物館に展示されている、ひばりが丘団地の室内
1960年代、匂坂春平が亡くなったのは
日本各地に、こんな団地が作られていった時期でした)


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2020.01.15  精神の在り場所 


2020_tuwanoshinbun.jpg

「石蕗の花」の本の見返しに、
S63. 12.7 夕
と鉛筆書きされた新聞の切り抜きが
セロハンテープで貼り付けてありました。
著者が亡くなった1988年の夕刊に載ったコラム記事で
女性戦中派作家の死 ある「失意世代」
というタイトルです。

広津桃子(1918年 大正7年生)の世代の女性は
同年代の男性が戦争で亡くなっているため
生涯独身であったり、寡婦であったりして
「家庭のぬくもりを作り出す幸せを持たなかった」
と記事にはあります。

30年以上前の記事を書いた人は
「独身」と書いて「孤独」と読む、とでも思っていたのか。
独身で生涯を閉じた作家を磁石にすると
砂鉄のように「寂しい」という言葉が
吸い寄せられてくるとでも思っていたのか。

確かに戦時中に結婚適齢期を迎えたこの世代の女性は
夫や恋人を亡くした女性が多かったかもしれません。
でも寂しく生きたか、強く生きたか、楽しく生きたか、
そんなことは、その人にしかわからないことです。

「ひきこもり」「独居老人」「シングルマザー」などなど、
なんでもラベルをつけて書いたほうが、
記事は書きやすいのかもしれません。
とても巧い文章なので、さらっと読んだときには
ふうん、と納得してしまうのですが、
後からじわじわと、そうではない、と思うのでした。

「石蕗の花」は
網野菊という女性を悼む
哀歌(エレジー)ですが、
その哀しさは、寂しさとは違うものです。
その人が生きていた日々を愛おしむ気持ちです。

そういえば、「表札」という詩を書いた
石垣りん(1920年 大正9年生)も広津桃子と同年代で
生涯独身であった人でした。

精神の在り場所も
ハタから表札をかけられてはならない 
石垣りん
それでよい。


何かと表札をかけたがる世の中にあって
固定観念や思い込みこそが
寂しさを増幅させている、そんな気がします。
もっともこれは30年前の記事なので
今はもうちょっと違う感覚だと思いますが。

関連記事 in my blog: 石蕗の花ー網野菊さんと私


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2020.01.12  孫に語り伝える「満州」 



孫に語り伝える「満州」
(岩波ジュニア新書 1998/1/20)
坂本 龍彦

八木義徳の小説「胡沙の花」の舞台、
満州の奉天は作者が滞在した
1938年から1943年頃の風景です。
網野菊が「満州」について書いた作品は
まだ読んでいませんが、
網野菊が夫と奉天で暮らしたのは、
八木義徳よりさらに前
1930年から1938年までだそうです。
10年近く期間が違うので、
二人の作家の見た風景は随分違っていたでしょう。

歴史が大の苦手なわたしは「満州」について
ほとんど知らなかったので
母の本棚にあった、この本を読んでみることにしました。

著者は網野菊や八木義徳よりもさらに若い
昭和8年生まれです。
教職にあった父親の赴任先の満州へ
家族とともに移り住んだ少年。
彼が経験したのは
思っていた以上に壮絶な物話でした。
八木義徳の小説に出てくる奉天の冬も
相当に寒そうでしたが、
それよりもさらに北の町です。
引き上げの船が着く港町ははるかに遠いのです。

とはいえ終戦前に日本に戻った
八木義徳や網野菊が幸せだったかというと
彼らもまた空襲で家や家族を失っています。

著者の書いた絵や詩なども交えた「語り」は
若干感傷的すぎる気もしましたが、
よく考えれば、それも仕方のないことかと。
著者にとっては、よく行くお店のおばさんや
同級生が巻き込まれていった悲劇です。
一方で、広大な大地に落ちる夕日の美しさや
エキゾチックな街の喧騒に心を駆り立てられる
そういう感覚もあったのだろうと思います。

石原吉郎のいうところの
「一人一人の名前が見えないジェノサイド」ではないからこそ
悲しみが深い。
そのことを、また改めて思うのでした。

関連記事 in my blog:: 胡沙の花・ほかー八木義徳全集より 
古い旅の絵本ー8月15日に思うこと


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2020.01.09  家庭料理 野菜編 


Yasaino202001.jpg
家庭料理 野菜編
(婦人之友社 1966/6/1)
沢崎 梅子

年末は勢いにおされて
肉だ野菜だ果物だと買い込んでしまう傾向があります。
無駄にしないようにせっせと冷凍保存して
財布のひもをひきしめていこうと思っていますが
初売りの八百屋さんの前で
大根を見たとたんに気持ちがざわざわ。

なぜ、わたしは大根を見ると気持ちがざわつくのか。

はて?と思うも、あっそうそう
年末は大根問題が常に頭の隅にあったのでした。
年の瀬は残業も増えるので帰りが遅くなります。
そしてクリスマスあたりからじわじわと野菜が高くなります。
保存のきくものはなるべく早くから買っておくのですが、
大根は、どうしてもみずみずしいのがほしい。
年があけてもその懊悩だけが残っていたのでした。
耄碌して、同じものを何度も買ってきてしまう
なんていうのも、そういう「なんとかしなきゃ」
という思いの残像からくるものなんだなと、
改めて思ったりしていました。

今年は、母のところからもらってきたお重箱に
おせちをつめてみました。
ただ器だけのことなのに
久しぶりに家に帰った気持ちになりました。
画像に映っている古い料理の本は
学生になって一人暮らしを始めたとき
「野菜のことが一からわかるから」と母がくれたものです。
最近はまったく開かなくなっていましたが、
久しぶりに開いてみたら、
母のおせちの「虎の巻」
黒革の手帳ならぬ、黒表紙のメモ帳もはさまっていました。

「黒豆と、二色たまごはわたしが作るから貸して」
と言って持ってきて、
母からは「返してよ」と言われていたのに
ずっと返さないでいました。
この手帳を見ながら、母がおせちをつくる横で
お手伝いという名のつまみ食いをしていた寒い台所が
懐かしく思い出されます。

関連記事 in my blog: イチゴと黒豆


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2020.01.05  ぎん色いろ色ーあけましておめでとうございます 2020 


shinnen2020011.jpg

あけまして、おめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

年末、体調を悪くしたうちの文鳥が
なんとか回復してくれて、一緒に年末年始を
過ごすことができました。
とはいえ、まだ心配なので
今年のお正月はほぼ、
ビニールの覆いをして温めている文鳥のケージのそばで過ごしました。

そんななので、
ご近所定点観測していたみたいな。
お休みしていた記憶を脳内で早送り再生すると
わぁっと年末のあわただしい買い物風景から
静かな元旦の朝があらわれ、
破魔矢を持った人が通り過ぎていくと
2日にはそろそろ駅前のお店は開いていて、
3日からはすぐ近所のスーパーも開いています。

日々、ぬくぬくと文鳥と過ごすしあわせ。
文鳥もときどきじっとこちらを見ています。
がんばって長生きしてもらいたいです。

shnnen202001.jpg
(近所の神社の樹が光っています)

関連記事 in my blog: ぎん色いろ色ーAudubon Songbirds Calender 2019


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