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空飛ぶ色いろnatsuno07

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2019.08.26  魔術師のおい 


書影
魔術師のおい
(岩波少年文庫)
C.S. ルイス 作 瀬田貞二 訳
(オンマウスで、廃墟の街を行くポリーとディコリー。
廃墟のシーンは印象的でした)

ナルニア国物語の7つの物語は、1950年から1956年まで
1年に1冊のペースで出版されています。
前に、その出版年順で読みましたので、
こんどは、ナルニア国史の
時系列順に読んでみることにしました。
そのようにして読んでみて思ったことですが、
もし初めてナルニア国物語を読むのであれば、
やはり出版年順で読むのがいいのではないかと思います。
この一連の物語を、作者がこの順番で語っていることにも
「意味」があると思います。
それに現在、過去、未来を自由に行き来できるのが、
この物語の面白さであり、重要なところかと思います。

「魔術師のおい」はナルニア国誕生の物語で、
時系列で並べると1番最初に来る物語です。
出版年順では6冊目、これに7冊目の「さいごの戦い」が続きます。
聖書でいうならば、創世記にあたりますが、
この二つの物語が終盤に並ぶことで
ラスト7冊目の黙示録的世界が強烈に印象付けられます。

このようにナルニア国物語は、
キリスト教主義的な考えの上に成り立っている
児童文学ですが、
読むたびに不思議に感じるところがあります。
なぜ、こんなにキリスト教的だけれども
あくまでも「聖書」に似せた物語であるのか。
キリスト教世界が身近ではない国ならともかく
聖書の物語が浸透しているヨーロッパで
なぜ、イエス・キリストではなくライオンのアスランなのか。
なんとなくその「似ている感」にひっかかりを感じたりします。

ライオンはイングランドを象徴するそうですが、
ナルニア国物語は、第二次世界大戦の痛手から立ち直ろうとしている
そういう時代の「イギリス」の物語であり
キリスト教世界的な物語であるということよりも
そのことの方が重要だったからなのか・・。

「魔術師のおい」はロンドンにまだ馬車が走っていたころの物語で、
古き良き、ともいえるけれど、古き悪き時代でもある
そんな「現在」を生きるポリーとディコリーという少年少女が出てきます。
二人は自分たちの力で「現在」と「未来」を守り切り開こうとします。
「魔女とライオン」のあの街灯は、あの洋服ダンスは
そういう理由でそうなのか、ということがわかったりもします。
そして、ナルニア国物語に登場する少年少女の中でも
かなりポリーとディコリーは好きだな、と思ったのでした。

関連記事 in my blog: ふたたびナルニア国へ


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2019.08.23  文豪の探偵小説 


bungo201908.jpg
文豪の探偵小説
(集英社文庫 2006/11/25)
山前 譲 編

谷崎潤一郎 途上
佐藤春夫 オカアサン 
泉鏡花 外科室
三島由紀夫 復讐
芥川龍之介 報恩記
川端康成 死体紹介人 
太宰治 犯人 
志賀直哉 范の犯罪
森鴎外 高瀬舟

最近、「文豪ストレイドッグス」というゲームに出てくる
中原中也を見て、今はこういう感じなんだ・・
と思ってみていたのですが、そんなおり
こんな感じの表紙のアンソロジーな文庫をみつけてつい買いました。
芥川龍之介と太宰治と泉鏡花がやっている探偵事務所・・
京極夏彦な雰囲気です。
どれも短編で、エドガー・アラン・ポーのようでもある
ちょっと怖いような9作品を
ああ難しっ・・ともがきながら読みました。

泉鏡花の外科室は、思っていたのと逆の展開だったので驚愕、
いやぁ、ないだろう・・と思いながらも
冒頭の病院の描写など、独特の表現がすごいと思いました。
川端康成はじわじわくる「やばさ」が怖いのですが
引き込まれる自分がおりました。
そして三島由紀夫は演劇の舞台が思い浮かぶようでした。
谷崎潤一郎は、日常のスナップ写真を次々に並べていきながら
そこに隠れている犯罪をあぶりだすような作品でした。

この、ひとつひとつの作品を展覧会のように並べたら
どんなだろうと考えました。
谷崎潤一郎は、木村伊兵衛
泉鏡花はビアズリー、芥川龍之介は野中ユリ
川端康成はポール・デルボー
三島由紀夫は安井曾太郎のようでもあり、
青の時代のピカソのようでもあります。
森鴎外は篠田桃紅

佐藤春男、太宰治、志賀直哉については、
作品に苦手意識が働いてしまったせいか
自分の中では、絵が浮かびませんでした・・。

関連記事 in my blog: ベルギー 奇想の系譜


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2019.08.17  2019ボローニャ国際絵本原画展 


書影
(図録表紙。オンマウスで、裏表紙。)

ボローニャ国際絵本原画展の最終日
駆け込みで見てきました。
以前行ったのはなんと7年前でした。
その時は高島平の駅からの道に迷ったりしたので、
今年は成増の駅からバスに乗りました。
こちらの方が、時間的に早いということがわかりました。

素敵な作品がいっぱいでした。
上の画像は、図録です。
図録の表紙につかわれているのは、
城や塔などの建築物を背中にのせて飛ぶ
様々な鳥の姿。
ロシアのイーゴリ・オレイニコフの作品で、
2018年に国際アンデルセン賞を受賞している作家だそうです。

心惹かれる作品は沢山ありましたが、
中では韓国のキム・ソルギの「モモとトト」
可愛らしいうさぎと猿が出てきます。
自分の好きな色を相手に勧めることが友情ではなく
相手の好きな色に気づくことが友情であるというお話です。
恋人同士、夫婦、親子にも
同じことは言えるかもしれません。
猿の好きな黄色、うさぎの好きなオレンジ色
子供がすんなりと入っていける絵本ではないかと思いました。
もう一つ、イタリアのダニエラ・ティエーニ
「ペルシャの昔話」も素敵でした。
ドラマティックでエキゾチックです。
カタログには一つしか絵が載っていないので
イタリア語は読めないけれど絵本が欲しいなと思うのでした。

成増経由で行けば、さほど大変じゃないということがわかったので
来年ももしあるのなら、時間に余裕を持って見に来たいです。

関連記事 in my blog: ボローニャ国際絵本原画展


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2019.08.13  ポーの一族展 


Ponoichizokuten20190802.jpg
(これは松屋じゃないですが、銀座のランドマーク和光のビル
灼熱感が伝わるでしょうか)

一週間ほど前
銀座MATSUYAへ「ポーの一族展」に行きました。
東京は8月6日まででしたが、今年の12月には大阪で
来年3月に川崎でも開催されるそうです。
開催日も終わりに近づいてから気づいたのですが、
ものすごく混んでいるだろうし
猛暑日に外へ出るのもなかなか勇気のいることで
半ばあきらめていたのですが、
どうにか、ぎりぎり見に行くことができました。

「ポーの一族」だけでも、相当な量の原画が展示されていて
それ以外にも「トーマの心臓」、「この娘売ります」
「訪問者」「メッシュ」、そしてごく最近の作品まで
見ごたえのあるものでした。
「ポーの一族」を初めて読んだときには
物語に挿入される詩のようなフレーズが
とても不思議な印象で
そういう場面ほど絵と一緒に
くっきりと頭の中に残っています。

船よ、帆かけて進め
東へ 黎明に向かって


東西ドイツにわかれたことで、
家族と離れ離れになってしまった少年キリアンが
学校の屋上から東の方を眺めているシーンの
この詩がとても好きでした。
あるかなぁと期待したのですが、それはなかったです。

「ポーの一族」や、「トーマの心臓」は
初めて読んだときは、変わった話だなぁと
と思ったものです。
それでも絵のきれいさに惹かれて
何度も何度も読み返しました。
原画を見ていると、その頃の記憶が
一気に蘇るようでした。

Ponoichizokuten201908.jpg

関連記事 in my blog: 萩尾望都SF原画展


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2019.08.08  わたしが一番きれいだったとき 


noriko201908.jpg
茨木のり子詩集
(思潮社 現代詩文庫20 1973/9/1 8刷)

子供の頃、夏休みで家にいると
テレビから黙祷、という声が流れてきて
ああ、原爆の日だと思ったものです。
母は午前中の洗濯を終え、お昼の準備をしていたり
庭仕事をしていたり。
テレビはついているだけで
誰かが見ているわけではない、
そんな感じの家の中が思い浮かびます。
そのずっと延長上、何十年もたった去年の夏
8月9日が母の命日となりました。
いやお母さん
この日は世界中が平和を祈る日なんだけど
なんて思ったりします。

母の本棚に数冊並んでいる茨木のり子の詩集
その中でも一番古い思潮社の現代詩文庫は
母が生きているときから、借りたままになっている本です。
「対話」(1955) 「見えない配達夫」(1958)
そして「鎮魂歌」(1965))の3冊の詩集からの詩
と未刊の詩などがまとめられています。
有名な「わたしが一番きれいだったとき」は
「見えない配達夫」に収録されている詩で、
戦後13年たった日本で、30代の女盛りを生きる女性の
「長生き宣言」の詩です。

だから決めた できれば長生きすることに
年をとってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのように
                    ね


そして「鎮魂歌」の中には「本の街にて」という詩があります。

うす汚れた下駄を鳴らし
袴をはいて闊歩した明治時代の書生たち
モボきどりで
女の子を追っかけまわした大正の学生たち
その子らやその孫ら
いま尚ひきもきらず肩で風を切ってゆく街
お茶の水の駅を降りると
遠く散って行った者たちの郷愁が
石畳にも花屋の店先にも色濃く滲んで
その濃厚さに かすかに酔わされる


その後、昭和、平成、令和と時は流れ、
お茶の水の濃厚さも様変わりしました。
遠く散っていった人たちの、孫が働き盛りを迎えている今
長生きするなら
働けるだけ働きましょうなんて声も。
どうかなぁ。
「年とってからすごく美しい絵を描く」
見るのはともかく
美しい絵を描くとは・・
灼熱の炎天下、墓参りをして溜息をついてきました。

関連記事 in my blog: だから決めた 神田讃歌


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2019.08.05  2019年8月 読みたい本 


umi201908.jpg

毎年夏になると、本屋さんに
文庫フェアのポップやポスターが並び
若い人向けおすすめ文庫のカタログも置かれています。
それで、どれどれ今年も「こころ」はラインナップされているかな、
なんて見るのが楽しみです。
本屋さんで角川文庫と新潮文庫と集英社文庫の
カタログをもらいました。サイズは文庫本と同じ。

わたしの本好きは、活字中毒ではなくて
挿絵とか装幀とかの本好きなのかもしれない
と気づいた今日この頃ですが、
これが今の若い子受けするカバーなのかなと
文庫の表紙を眺めるのも面白いです。
「人間失格」はどの文庫にも入っていましたが、
角川文庫の表紙が、やたらにカッコ良い。
集英社文庫も同系ですが、太宰治って今こんな感じなのか
とびっくりです。

「新潮文庫の100冊」は
それぞれの本の「心に残る1行」が載っていて
読み応えがあるカタログでした。
カミュの「異邦人」はあの有名な出だし
きのうママンが死んだ
かな、と思ったら
私ははじめて、世界の優しい無関心に心をひらいた。
とあって、一度は読んだけど全然覚えていないことを
まざまざと思い知りました。
シビレル本とかヤバイ本とかの分類に古典が入っていたりします。
やっぱりあったぞ、の夏目漱石の「こころ」は
あなたはそのたった一人になれますか。
おおお。
ちゃんと「恋する本」の項目に入っています。
ちなみに角川文庫にも「こころ」はラインナップされていて、
表紙はどちらも渋め。
(鎌倉の海岸風景を表紙にすればいいのに)
集英社文庫は、「坊ちゃん」推しでした。

ともだちに言わせると、「こころ」のどこが面白いのかわからない
そうですが、わたしはなんか好きです。
同じ「恋する本」にあった
最上くんって頭いいけどバカだったんだね
と同じような感じ。読んだことがありませんが
七月隆文「ケーキ王子の名推理(スペシャリテ)」
という小説からの「1行」です。

関連記事 in my blog: 2019年7月 読みたい本, 夏目漱石の「こころ」を読む


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