2018.03.13 悲嘆の門

悲嘆の門
(上中下 新潮文庫 2017/12/1)
宮部 みゆき
サイバーパトロールのアルバイトをする大学生と
初老の元刑事を軸に展開するサスペンスストーリーです。
「正義感」とは?
人間の「欲望」とは?
「非現実」の登場人物を絡めながら
物語は展開していきますが、
途中、なんだかよくわからなくなり
とりあえず読了したあとで、
もう一度「英雄の書」を読み返して
ようやく、なるほどと思ったりしました。
2015年に「悲嘆の門」が毎日新聞社から出版されたとき
インタビューで宮部みゆきは
「英雄の書」では書けなかった
「英雄」になってしまう側を書きました。
と言っています。
(毎日新聞Web: 著者インタビュー)
「魔術はささやく」や「火車」もそうでしたが、
人を誘導し、だまし、方向性をもたせるという
「ストーリー」の危険な側面を、宮部みゆきはくりかえし描いています。
殺人犯に対抗するため(毒をもって制す的に)
ある「物語」を主人公が持ち出す
「模倣犯」という作品も似たテーマだと思います。
「連続殺人事件」
・・・かもしれないということに、増幅して煽られ
得体のしれない力と方向性を持った世の中(ネット世界)
そこに、正義感を持った青年が向き合う葛藤
ヒーローとしての高揚感と残虐なリンチというメビウスの輪。
抜け出せない悲劇の中で
いったい何が人を救うのか。
文庫本の上中下を三冊横に並べてみて
表紙絵がつながることに気づきました。
「英雄の書」と同じく、
宮部みゆきの文庫の表紙を多く手掛けている
藤田新策の絵です。
高層ビルのすぐそばに、木造のアパートがある
都心にはそういう不思議なエリアがけっこう多いのです。
それは確かに、ふしぎな異空間にいざなわれるような
そんな気持ちになります。
関連記事 in my blog: 英雄の書-赤い本のいざない
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