2017.02.07 ダーシェンカ 愛しい子犬の本
(白っぽい表紙は判田良輔訳、青土社 2015 ダーシェンカ 愛蔵版)
漱石は大変な動物好きだったそうです。
「漱石の思ひ出」に、夏目家が熊本にいた頃飼っていた犬の話があります。
人に噛みつき、警察にしょっぴかれてしまった犬を、
漱石はものすごい理屈を並べ立てて、奪還します。
ところがこのワンコ、今度は夜更けに帰ってきた漱石を
飼い主と理解せず噛みつくのです。
奥さんは大笑い。
犬の話、といえばカレル・チャペックの「ダーシェンカ」。
チャペックの少し憂いのあるユーモアは
どこか夏目漱石と似ているものがあるように感じられます。
チャペック自ら描いた犬の絵がまた可愛い。
ありとあらゆるものを噛み噛みし、壊し倒し引っ張り
まったくじっとしていない子犬のダーシェンカ。
いろんな意味で溜息が出てしまうような日々が過ぎ、
やがて別れの日がきます。
ダーシェンカは新しい家族にもらわれていくのです。
チャペックが撮った写真もたくさん載っていて、
「小犬の写真を撮影するには」という、これまた愛しいお話もあります。
今手もとには3冊の本があります。
いちばん最初に読んだ本は、図書館で借りた
伴田良輔訳の「小犬の生活ーダーシェンカ」(新潮社)でした。
当時その本は絶版。
残念に思っていたら、本屋さんで
海山社から出ている栗栖茜訳「いたずら子犬ダーシェンカ」をみつけました。
その後、読めもしないが、どうしても欲しくてプラハで買ったチェコ語の本が2冊目。
そして同じ2015年の暮れに、青土社から
伴田良輔訳で出版されている「ダーシェンカー愛蔵版」を見つけ
3冊目を大喜びで買ったのでした。
3冊とも挿絵のレイアウトが違っていて、
それぞれに雰囲気があります。
チェコ語がわからないので、
栗栖訳、伴田訳のどちらが原文に近いのかわかりませんが、
伴田訳のほうがお父さんぽいです。
栗栖訳は子犬のじっとしていない感じが
ものすごく伝わるレイアウトになっています。
「です、ます調」なので、より子供向けな印象です。
内容は全然難しくないし、絵も楽しいし、写真まである
ただあるんじゃなくて文も絵も写真もそれぞれに
とてもいいんです。
こんなに素敵な本ですが、日本では
さほど有名な児童書ではないような気がします。
むしろ大人に熱烈に愛され、絶版させない努力ゆえに
残っている本なのかなと。
関連記事 in my blog: 夏目漱石の妻 カッパ会議
(青い表紙は栗栖茜訳、海山社 2008 いたずら子犬ダーシェンカ、一番左はチェコ語の本。)
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