2009.10.11 秘密の花園 その2
子供の頃読んだ本のことを書こうとすると、
自分の記憶に、いろいろな「思い違い」のラベルが貼られている・・
ということに気づかされます。
「秘密の花園」を読み返しているうちに、はじめて読んだのは、
今自分の手元にある福音館の本ではなかったのではないだろうかと
しきりに思ったのでした。ずっとこれが自分の本だった・・のにです。
それが、先日ふと、もしや・・と思い調べてみたところ
古い、古い本に行き当たりました。
「小学館 少年少女 世界の名作文学 アメリカ編ー5」
もうずっと以前に絶版になった全集ものの一冊。
わたしが最初に読んだ「秘密の花園」は、この分厚い本に、
同じくバーネット著の「小公子」「小公女」と一緒に収録されているものでした。
表紙はベラスケス、「王女マルガリータ・マリアの肖像」です。
自分の本ではなかったし、子供にしてみれば
恐ろしく厚みのある本なので、どのお話もななめ読みしたような気がします。
全集のうち3冊くらい家の本棚ありましたが
もう何年も前にどこかへ行ってしまっていてすっかり忘れていました。
急に懐かしくなって本を探しました。
下の写真のものです。昭和39年発行、こんな立派な装丁の本が480円。
谷村まち子訳、山中冬児挿絵。
読み返してみると、メリーがインドでたったひとり取り残されるシーンが
カットされていたり、福音館の猪熊葉子訳では、
インドの乳母がコレラで死んでも「メリーは泣きませんでした」が
この本では「ひどく悲しかった」ことになっています。
当時の子供にはメリーの乾いた感覚は
理解不能と判断して書き換えたのでしょうか。
メリーがインドで取り残されたとき、彼女のそばには
無害な一匹のへびだけがいました。
こういうのもカットされています。
「失楽園」のイメージを逆回転させていくような象徴的な場面なので、
大人からすると削除しないほうが・・と思いますが、
子供には、いらないといえばいらないのかも。
ともあれ、子供のころに想像力を駆使しながら読む楽しさと
大人なってから気づく細部があるからこそ古典なのでしょう。
病気の子供の回復という点では
やや短絡的、理想的すぎるかもしれません。
ラストはメリーについてももう少し書かれてあってもいいのに・・
などというあっけなさもあります。
それでも、くりかえし読みたくなるお話です。
古い本を久し振りに手にとって、子供のころはあんなに
「重い本」と思ったのに意外に軽く、サイズが変わった自分を思い知るのでした。
かつて読んだ本を探し当てることよりも、
子供の頃の自分が何を感じたのかを思い出せた方がいいのかもしれませんが
物語は常に自分の前に新しいものである
新しい発見をさせてくれるものである
と考えながら「思い違い」のラベルを張り変えたりしています。

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関連記事 in my blog: 秘密の花園
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