2016.05.30 春の夢 ポーの一族
「ポーの一族」の復刻版の限定BOXが、発売と同時に売り切れていたので、これはキケンだわ、と最新作の載るFLowerは予約しました・・・が、「しまったぁ。会社あてにしちまったぁ」で週末はお預けとなり本日ようやく手に取りました。
早速ページをくくると萩尾望都の絵が相当変わったので、役者が違うくらい、印象が違いました。 でもまぁ、40年たって俳優が同じわけがないわね、と妙に納得をしながら読み始めました。
舞台がヨーロッパなのに登場人物がめちゃくちゃ日本語しゃべってる昭和少女漫画の世界。 タイトルの「春の夢」はシューベルトの歌曲集「冬の旅」の中の一曲から来ています。 ドイツ語の歌詞ですが、シャンソンのようにも、ジャズのようにも聞こえます。 舞台は第二次世界大戦中、「はぐれた小鳥のような心細い目をしている」ユダヤ人の少女が登場します。
後編は悲しい展開になるのでしょうか。 ほんとに、このサイズの少女漫画雑誌を開くのは久しぶりです。
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2016.05.28 ここが家だ
ここが家だ―ベン・シャーンの第五福竜丸
(集英社 2006/9)
ベン・シャーン 画 アーサー・ビナード 文
オバマ大統領がヒロシマに来ました。 スピーチは詩的な印象で、ヒロシマのHがちょっと抜けてイロシマときこえるのが不思議な感じでした。 カラフルな色のかさなっていく、世界中にはいろいろな人がいる。
1954年ビキニ環礁近くで漁をしていた第五福竜丸がアメリカの水爆実験の放射能に被曝した事件について描かれた絵本があります。 米ソ冷戦時代の話。
We did not know what happened to us
(わたしたちに何が起こっているのかわからなかった)
被曝したその瞬間、西から太陽が昇ったのかと錯覚するほどのまぶしい光が見え、その後空は真っ黒になり灰いろの雪が降ってきたそうです。
実験はその後 千回も2千回も くりかえされている
2000回という回数も驚きですが、未だいくつかの国で核実験は行われているというのも驚きです。 広島に落とされた原爆の1千倍の威力を持つ水爆・・。 規模の大小はあるでしょうが、そんな実験を2000回もやって「地球は大丈夫なのだろうか?」
実験が行われたビキニ環礁にある島は62年たった今も汚染されていて、人は住めません。
Score of White Pigeons (白鳩の楽譜)という絵には、「誰もが忘れないというが、忘れるのを待っているひともいる」ということばがそえられています。
表紙になっている絵は、焼津の町並みを遠くからみて描いたものです。 ベン・シャーンの絵は壁画のような色合いですが、めくれている部分をひらくと海が見え、そのとたんに色が透けて涼しげに感じられます。 ページをくくるとBoy's Day という焼津の空に高々と泳ぐこいのぼりの絵がモノクロで現れます。その記憶をたどろうとすると心が色を失うからでしょうか。
空をおよぐ魚は、「ここが家だ」と語りはじめます。
海にも空にも境がないのです。
関連記事 in my blog: 「ベン・シャーン」展
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2016.05.26 さよなら はな子さん
(2014年4月の姿。)
井の頭公園の動物園から、
象のはな子さんが旅立っていきました。
2年前に見たきりになりました。
後ろ姿のはな子さんです。
こんなかんじにゆっくり空にむかって足を一歩ずつ前にあげて
どんどん高いところに行ってしまうのだな
かなしいな・・・
なんとなく空気が黄色っぽくなってしまったようで、
なんでだろう、
ニュースを聞いたのが夕方だからかな
とぼんやりしていたのですが、
それはユノセイイチの「くまさぶろう」を思い出していたからだと
しばらくして気がつきました。
動物園から象をぬすんだどろぼうの話。
今日あたりのくまさぶろうは、
泣きたい気持ちをあちこちにみつけて大忙しなことでしょう。
いつかおばあちゃんになる
いつかいろんなことがわからなくなる
そしてだんだんものが食べられなくなる
それから静かに終わりが来る
それは小鳥でも人間でも象でも
体重に関係ない老衰の姿で、大往生と呼ばれる最期です。
もはや立ちあがることができなくなってからでさえ
はな子さんも、看病していた方たちも
がんばったんだろうと思います。
さよなら、はな子さん。ほんとうにお疲れ様でした。
関連記事 in my blog: くまさぶろう, 熱帯鳥温室
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2016.05.23 アメリカンパイ
(マウスをのせると、かじってます。)
1976年で幕を閉じていた「ポーの一族」の新しい話が40年ぶりに登場とあって、気になる今日この頃。 久しぶりに萩尾望都作品を読み返したりしています。
今はもう絶版なのか版元品切れなのか、「アメリカン・パイ」というマンガがとても好きです。 1976年「プリンセス」2月号3月号に掲載されたもの。 「ポーの一族」のラストストーリー、「エディス」は「別冊少女コミック」1976年4月号から6月号なので、これもまた40年前の作品です。
舞台はアメリカのマイアミぱっとしないミュージシャン、グランパが、行きがかり上面倒を見ることになったリュー。 そばかすだらけでどうみても男の子、でも実は女の子。 リューが好きな歌はドンマークリンの「アメリカンパイ」。 そんな彼女があるときライブハウスの前座で歌うと驚くほど沁みる歌声で観客を沸かせます。 前編はコミカルで笑えます。 海が開けて、空が大きくて明るさと気楽さと解放感に満ちています。 が・・・。
古い古い歌が
だれがつくったのかわからないくらい古い歌が
それをつくった人のこともすべて忘れさられ消え去っても
その歌が残っているように・・
「詩人の魂」というシャンソンをアレンジしてグランパがライブハウスで歌っています。 その横でリューがグランパを見つめています。
このシーンは冒頭とラストと同じものですが、ストーリをたどり終えラストに改めて聞く彼の歌はなんと切々と響くことか。
久しぶりに読んでやっぱりいいなぁと思うのでした。 古いけどいい映画
そんな感じです。
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2016.05.22 南桂子のハシビロコウ
[図録]生誕100年 南桂子展
5月29日まで萩尾望都SF原画展をやっている武蔵野市立吉祥寺美術館は入場料が100円という安さ。 チケット売り場で、おもわずえっ?と聞き返してしまいました。 しかも、同じチケットで、二つの記念室も見ることができます。 浜口陽三記念室では、「南桂子ー遠くを見る」というタイトルで南桂子の版画が展示されていました。 なんというラッキー。 4年前、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションへ「船の旅」を見に行った時は、なんだなんだどうしたどうした的な大混雑の展覧会で心静かに見るという雰囲気ではなかったのですが、今回は、ゆっくり好きな作品の前で時間が過ごせます。
やっぱり鳥の絵が素敵だなぁと見ていくと、ふと目にとまった「異国の鳥」という一枚。 こ、これは・・・。ハシビロコウではありませんか。 寝癖っぽい後ろ頭の羽根のかんじ、横からみると笑っているように見える嘴の曲線、嘴のやさしい桃色。 思いもかけないところでばったり出会ってしまいました。 生誕100年の時の図録によると「異国の鳥」は1970年代のフランス時代に作成されたもの。
フランスの動物園にアフリカのハシビロコウがいたのでしょうか? もう50年近い昔に、南桂子はハシビロコウを見ていたのでした。 図録によると、群馬県立館林美術館で持っているそうです。
ミュージアムショップに南桂子の本がいくつかあってこの「異国の鳥」がみつけられたのは、生誕100年展の時の図録のみ。
うーん、欲しいな、でもなぁとその時はあきらめて帰りました。 ヤマサコレクションの時も悩んで図録は買わなかったのです。 結局どうしても欲しくなって別の日に買いに行きました。 ページをめくっていくと他にもさまざまな鳥たち。 時間を忘れて見入ってます。
武蔵野市立吉祥寺美術館 URL: http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/
関連記事 in my blog: ハシビロコウ, ボヌール, 萩尾望都SF原画展
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2016.05.21 若冲マジック
上野の若冲展もあと少しで終わりになってしまいます。
入場待ちがついに6時間を超えた日があったとか。
わたしは、つい最近まで若冲という人を知りませんでした。
小鳥がらみで、うっすら見たいなとは思っていたのです。
それが、「絶対見たい」に変化したのは
西荻の駅にも出ていた鮮やかな看板広告を見てから。
真っ赤なバックから飛び出してくる
めくるめく不思議な生き物の姿。
本来の若冲の絵のすごさもさることながら、
このポスターもすごかったと思います。
「一月かぎりのこの世の楽園」という言葉
そこに「若冲展」というタイトルの芝居がかかっているように
なんともわくわくしたものでした。
300年前、京都錦小路の青物問屋の長男に生まれた若冲、
自分は商売には興味がなかったそうです。
ひたすらに絵を描きたかった人。
京都でもたくさん展覧会が開かれるようで、
あのただでさえ劇的空間の京都で
見てみたいかもと思います。
関連記事 in my blog: 若冲展
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2016.05.15 はしれ、トト!
(マウスをのせると、中庭の白バラが見えます。)
はしれ、トト!
(文化出版局 2013/7/7)
チョ ウンヨン作 ひろまつ ゆきこ訳
上井草の「ちひろ美術館」で「はしれ、トト!」の原画展を見てきました。
馬のぬいぐるみ、トトが大のお気に入りの女の子が
おじいちゃんと一緒に競馬場に行ったときのお話。
「聖コージズキンの誘惑展」を見に行ったのも
ちょうど去年の今頃で、庭の若葉や花々がきれいでした。
競走馬たちはまるでレスラーのようです。
ポスターの絵は馬たちがゲートに入ったところ
絵本では見開きになっていて緊張感が高まります。
どさくさにまぎれてシマウマもいますな。
女の子がぬいぐるみのトトに似ていると思ったのは
画像一番左端の白い馬。眼が点になってます。
ページをめくると一斉に走り出します。
トトがいない、トトがいない
おっとトトが飛び出しました・・・が、この絵本の表紙。
展覧会では、本ができるまでのスケッチや、
参考にした写真なども展示されていました。
競馬場に集まる大人たちはどんな?
馬の走っている姿ってどんな?
女の子は最終的には競馬には飽きてしまい
ぬいぐるみのトトに勝るトトはなしと思ったようです。
馬は哺乳類の中ではいちばん羽根が似合うと
わたしは思います。
もっかうちの鳥は、羽根の整備中です。
関連記事 in my blog: 母のまなざし 父のまなざし, サルビルサ
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2016.05.11 ぎん色いろ色ー愛鳥週間 2016
(目の下あたりを撫ぜられるのが好き)
5月10日から愛鳥週間だそうで、
そうですか、そうですかと
文鳥愛情道を、全力疾走していくキモチです。
冬の間、タマゴを産みまくって心配の極みだったうちの文鳥
無事に春を迎えることができ、初夏の今は換羽の真っ只中。
けそけそぱさぱさして、だるそうです。
警戒心が強くなって、いつもは怒らないシチュエーションでも
口をぱっかりあけて威嚇行動に出たりしてます。
そのくせ、心細いのか飼い主が出かけるところだとわかると、
きゅーきゅーと呼び鳴きをして寂しがったりします。
ぴゅーと飛んできて、肩にぽんと乗るときの
来たとは思えないほどの軽さや、
すわりこんで眠ってしまったときの温もり
指をさしだすと、やさしく甘噛み
などなど
文鳥の好きなところを考え出したらきりがないです。
今年の夏はまた暑さが厳しいという予報が出ていたけれど、
元気で夏を乗り切ってね。
(安心するとぺったりお腹をつけて、そのうち眠ってしまいます)
関連記事 in my blog: 夏は来ぬ
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2016.05.10 若冲展
(グッズの牡丹小禽図のトートバッグと絵葉書、
マウスをのせると、鳥獣花木図屏風のブロックメモ帳が見えます。)
上野の東京都美術館でやっている若冲展は4月22日から
5月24日まで、1か月の短い期間です。
見逃さないように4月22日の初日に行ってきました。
中に入ると入場口まで、ぐるぐる列が出来ていました。
待つこと15分くらい。
うわぁ、と思いましたがこの連休中には
100分待ちなんて状態の時もあったようなので、
待ち時間的にはラッキーな方だったかもしれません。
そんな状態なので、
最前列で見ようと思ったら、辛抱強く列について
じわじわじわじわ横歩きをしなければなりません。
全部の絵を横歩きしていると3時間くらいかかりそう。
そこで、動植綵絵30幅だけは、横歩きして見てきました。
鶏の絵が多いので、動物のお医者さんのひよちゃんと対峙する気分。
そんなにもがんばって近くで見ましたが、
動植綵絵は演出が大胆な作品なので
実はちょいと離れたところから見たほうが断然良いのでした。
すべて見終わったあとで、離れて見たとたん
うっ、美しいとのけぞる気持ち。
いったいわたしの横歩きの努力はなんだったのか。
なあんて、壮観な30幅の見晴しも、じっくり見た細部も良かったです。
そしてもう溜息しかでないのが鳥獣花木図屏風。
青と緑と赤で描かれたジャングル。
不思議な白い象がいます。
モザイクで表現されたエスニックな絵です。
入り口あたりに鳥獣花木図屏風のデジタルアートもあって
こちらも面白かったです。
関連記事 in my blog: 「ひよちゃん」「いたずらもの」と「ニンゲン」
こねこのぴっち 絵本原画展,
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2016.05.09 萩尾望都SF原画展
「もっと家の中を片付けたり、掃除をしたりするはずだったんだよね、一週間前は・・・」と言っていても仕方ない、吉祥寺美術館でやっている「萩尾望都SF原画展」へ出かけてきました。 元少女の頃に好きだった漫画の世界。 特にこの「スターレッド」は好きでした。 ちょいとボケてますが、こうしてならべると白い髪、赤い瞳の主人公「セイ」は文鳥っぽい女の子です。 気が強くて、ひたむきなところも。
萩尾望都の原画を見るのは初めてでした。 色の入っているものも、黒インクだけで描かれているものも、想像していた以上の美しさ。 よく、こういう風に動かしていくことを思いつくよなぁというダイナミックなコマ割りです。 原稿はだいたいA3くらいの大きさなので、そのダイナミックさが際立ちます。 あらためて本をだしてきて読み返しましたが、最初のセイとエルグの「最悪の出会い」のシーンなど原画のきれいさを見たあとだと、「印刷もうちょっとがんばれよ」と言いたくなります。 文庫サイズの本も出ていますが、最低でも雑誌と同じA4サイズで読みたいものだと思うのでした。
「ポーの一族」の新しい話が今月末出るそうで楽しみです。 そしてフラワーコミックスの復刻版も出るのだとか。 なーんと、わたくし懐かしさに負けて昨年中野ブロードウェーで古書を衝動買いしちゃったんですよね。 ハガキ入りの限定ボックスはすでに予約でいっぱいみたいです。
関連記事 in my blog: スター・レッド
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2016.05.08 雁助さん
テレビドラマ好きのわたし、
今更ですが、「あさが来た」にもはまっていました。
朝は見られないので、録画しておいて
土曜の夜に6回一気見。
江戸時代に両替商だった加野屋が
明治の世を迎え加野銀行へ変わっていく時
自分自身も生き方を変えざるを得ない
大番頭の雁助(がんすけ)と、番頭の亀助(きすけ)、
タイプの違うこの二人が特に好きでした。
亀助は一見頼りなく、長いものに巻かれがち。
不平を言いながらも付き合いが良くて、
面倒見もいいタイプ。
そんな人柄ゆえ、周囲に応援され
純な恋を成就させることができました。
一方雁助は、冷静で有能な仕事人。
それでもなお「古きお店」を愛し
亡き大旦那への思いも深い、情に厚い人でもあります。
「両替商」の看板が「銀行」に代わる日
旅姿で加野屋から去っていきました。
名前に雁がつくだけに
群れから一羽だけ遅れて飛び立つような寂しさがありました。
時代が自分を置いて行ってしまった。
雁助ほどの人であれば、当然「銀行」ビジネスでも
大きな働きをするはずでしょうが、それをしない。
その頑固さが、恋では不器用さとなってしまう。
ちょっとカズオ・イシグロの
「日の名残り」を思い出したりしていましたが
あれほどポーカーフェイスじゃなくて、
台詞の端々に関西人らしい「面白さ」「シニカルさ」
が加味されているところがまた良いのでした。
「雁助さん、いいなぁ」と友達に言ったところ、
「うん、まぁ、そうね」ぐらいの反応。
たしかにシルクハットの五代さまや、
洒脱に三味を弾いてみせる新次郎さんは
そうは見られない男前たちでしたけどね。
日の名残り (ハヤカワepi文庫)
(1989)
カズオ・イシグロ
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